以前、渡辺洋二氏の「秋水一閃」という帝国海軍の試作ジェット戦闘機開発に関する著作を読んだことがあり、いつか作ってみたいと思っていました。
このファインモールドのキットにはナノ・アヴィエーションシリーズの精密なシートベルトが1セット付属しています。
操縦席はとても狭いです。ジェットエンジンは甲液と乙液の混合で、過酸化水素水溶液を主にした液体と、水化ヒドラジンやメタノールを主とした液体を混合するものでした。大きな危険物のタンクに乗っているようなものです。テストパイロットの苦労が推察されます。
このシリーズのシートベルトは以前も何回か使ったことがあります。精密で調節しやすくてとても良いです。
(2019/08/15)
ピトー管は真鍮パイプに交換しました。
(2019/08/18)
試作機ということでクレオスMr.カラーの58番、黄橙色をメインに使用します。水平尾翼がないとなんだか変な感じですね。
デカールを貼ったのでもうすぐ完成です。
(2019/08/21)
この試作ジェット戦闘機秋水はドイツからメッサーシュミットMe163などの実用化されたジェット戦闘機の設計図を供与されてそれをもとに設計されました。潜水艦で秘密裏に海を渡った設計図ですが一部は途中で撃沈されて失われてしまいました。というよりも概略図が数枚手元に届いただけでそれを日本が苦労しながら飛ばすまで頑張ったと言った方が正しいかもしれません。
ファインモールドの組立説明書は細かい字で4ページにわたって詳細な実機解説がありとてもありがたいです。それ以上に興味がある方は先述した渡辺洋二氏の「秋水一閃」という記事が「非情の操縦席」という書籍に掲載されています。
試作機の飛行や開発は事故で死者を出しながらも昭和20年の7月まで行われていました。その頃はひょっとすると終戦の予感があったかもしれませんが、我々は8月15日に終わると分かっていても、当時死に物狂いで開発をしていた技術者は先のことは分からなかったでしょう。秋水が活躍するところを見てみたかったです。
マーキングは試製秋水の初飛行時、犬塚豊彦大尉試乗機です。昭和20年7月7日に追浜飛行場で試験飛行が行われました。このテスト飛行は高度500mまで上昇しましたがエンジンが停止、滑空飛行で着陸を試みるも不時着大破してしまいました。犬塚大尉は脳底骨折で意識不明の重体でしたがその日の夜中に亡くなりました。その後は2回目の試験飛行が行われることなく終戦を迎えました。
車輪は収納不可なので離陸したら投下します。着陸時には油圧引き込み式のソリと尾輪のみで着陸です。
真っ黄色のツヤツヤで仕上げると色が色だけにおもちゃっぽくなってしまうかと思いました。いつもよくやるプロセスで黒っぽい下地でグラデーションを僅かにかけてみました。半ツヤクリアーをデカール保護を兼ねてスプレーしています。
けっこう小型の飛行機でパーツが少ないのでそれほど難しいところはありませんでした。ドイツからの数枚の設計図、というかメモ程度のものだけでジェット戦闘機を飛ばすところまで漕ぎ着けたのは技術陣のものすごい努力の甲斐あってのものだったのでしょう。終戦間際の新兵器開発の1ページでした。
(2019/08/23)